なぜこれを教えるのか? 何を、ではなくて、何故?・・・と問う

「これは、何年生で教えるのですか?」
「5年生では何を教えたらいいのですか?」

よくこういう質問を受けます。

シュタイナー学校に共通の決まったカリキュラムはないので、自由ですが、一応、カリキュラム集などの書籍があり、それを先生方はひとつの参考としています。

こんな本ね。イギリスの先生の間では通称”yellow book”。バイブル的存在です。

でも、本当に大事なのは、何年生で何を教えるということではなくて、何故それを教えるのかということ。「何故」の部分がわかっていないと、まったく的はずれな教育になります。

ある意味、何を教えるかっていうのは、何でもいいのです。

たとえば、木工でスプーンを彫る。カリキュラムでいうと5年生くらいですね。だけど、5年生では、感覚を大事にし、木材の素材や質を感じ取ることが教育の目的です。だから、自然の木材(製材して直方体にしていないもの)を用いて、木の生きた素材そのもの、匂い、色、硬さ、木目などを感じ取り、その木材にぴったりで、木材の良さを生かすものを作り出す。そんな活動が、小学校5年生くらいでは必要だから、それをスプーン作りを通してやっているのです。

でも、スプーン作りをたとえば高校生にやらせることもできます。その時には、もっと論理的にプロジェクトに取り組むので、感覚で感じ取ることよりも、製材された木材を使い、どうやれば合理的なデザインになるかを考えたりするでしょう。人間工学に基づくスプーンのデザインなどをしてもいいですね。その年齢には、論理的な思考をつかって意志の力でものを作り出すというのが大事な学びだからです。

技術的に、その年齢にできるかどうかではなく、その年齢にあった育てるべき資質をうまく育てるための授業をするのです。その「なぜ」がわかってくると、「何」を「どのように」教えたらいいかもわかってくる。

だから、「スプーン作り」と言っても、取り組み方によって、まったく違った学びになります。「どうして教えるのか?」を知っていないと、高校生に合う方法で、製材した木材をつかって小学生とスプーン作りをしてしまったりします。

上に紹介したカリキュラムの本は、例として、何年生で何を教えるという情報が載っていますが、どうしてそれを教えるのかという洞察がちゃんと書いてあります。大事なのは、そこ。「何を」ではないんですね。

その「なぜ」がわかってくると、「何」を「どのように」教えたらいいかもわかってきます。

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この記事を書いた人

シュタイナー教育歴17年。ドイツからシュタイナー教育情報を発信。シュタイナー教育とメインストリーム教育の架け橋になるべく活動中。

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